日常で見つけた言い回し

IAEAによる水道数の放射線の基準を読み解く

2011年3月29日

出典は以下の「原子力や放射性物質緊急時のための備えと対処の基準」

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http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1467_web.pdf

IAEAのドキュメントなので、立場的には第三者的では無い分、中立性には欠けるが、一つの基準として読み解いてみる。
また、ここで取り扱うのは、危機管理のための緊急時のガイドラインであり、平常時とは違う。日本の基準が報道で必ず「暫定」基準と言われているのも、平常時では無く、緊急時の基準であるため。

P.39~

II.21. The process of assessing radionuclide concentrations in food, milk and water is shown in Fig. 5. First the potentially contaminated food should be
screened over a wide area and analysed to determine the gross alpha and beta concentrations if this can be done more promptly than assessing the concentration
of individual radionuclides. If the OIL5 (see Table 9) screening levels are not exceeded, the food, milk and water are safe for consumption during the emergency phase

食料、牛乳、水に関する放射性物質のアセスのプロセスを図5に示す。はじめに、汚染されている可能性のある食物は広い地域に渡ってスクリーニングし、もしα線とβ線の総量で決定する方法が手早いのであれば、個別の放射性核種を決定せずに、線量の総量でまずスクリーニングする。もし、OIL5(表9を参照)のスクリーニングレベルをこえてないのであれば、その食料、牛乳、水は、緊急時であれば安全であると考えて良い。

※OIL = Operation Intervation Level (介入オペレーションレベル)
※この文章を目にされた方が、いつでも安全なレベルと勘違いしないように、念のため「緊急時であれば」という所を太字にさせて頂きました。

以下はスクリーニングの方法のフロー図。
OIL5では、放射能の核種を問わず、全体の放射線量でスクリーニングする。
OIL6では、OIL5を超えた場合で、さらに放射線の核種毎の基準値を調べる。

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図5

OIL5を超えてなければ(NO)、緊急時には飲んでも良いレベルとされる。
OIL5を超えていれば(YES)、精密な検査で核種毎の放射線レベルを超えてないか検査が必要(核種毎の基準放射線レベルも設定されている)
OIL6に該当しなければ(NO)、緊急時には飲んでも良いレベルとされる。
OIL6を超えていれば(YES)・・・・例外的な状況を除いて飲料には適さないかもしれない。

初めから、OIL6の基準でスクリーニングを想定していないのは、実運用で核種の判別をするのはコストや手間的に厳しく、判断に速さが求めらるためで、原文にはOIL5で、α線、β線の情報だけで判断する事は、

「if this can be done more promptly than assessing the concentration of individual radionuclides」

とある。

OIL5のスクリーニング・レベルは、以下の表で定義されている。

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表9

OIL5は、α線、β線それぞれに定義されている。もしこれを上回っているようであれば、さらに OIL6で定義さされている核種毎の線度のスクリーニングをする。

ヨウ素131は、崩壊時にβ線を出すので、OIL5では、食料・牛乳・飲料水に含まれるヨウ素131レベルが 100Bq/kg 以下であれば、緊急時の(during emergency phase) 摂取基準としては安全とされている。水の場合は、1kg = 1L なので、100Bq/L 以下となる。
つまり今、各地の水道局が100Bq/L以下であれば、乳幼児でも安全としているのは、IAEA基準であれば、あくまで緊急時の摂取レベルになる。常用摂取とは違う。

既に東京都は、ヨウ素131のレベルは検出値以下になっているが、今後、事態が急変した場合は情報を正しく理解する必要がありそうだ。

核種毎のOIL6の基準は、この表は、P.41~から数ページに渡って Table 10 として載っている。

それによると ヨウ素131については、 3000Bq/L になり、これを超えた場合は、「例外的な場合を除いて飲むことには適さないかもしれない」とされている。
"かもしれない"となっているのは、科学的には正しい書き方だと思われる。人体実験をしているわけではないので十分なデータが無いはずなのと、病気はいつでも確率の問題として書き表すしかないからだ。(今度、医学系の論文があったら注意して見てみよう。。)

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ちなみに、WHOでは一生飲んでも安全なレベルとして、β線で 1Bq/L 以下としている。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3i200.htm

追記:WHOで定めているβ線で 1Bq/L というのは、IAEAのマニュアルと同じで、初期のスクリーニング時の値で、もしそれを超えるようであれば、核種を判別するスクリーニングを行うようなガイドになっている。
β線で1Bq/LというWHO基準は、核種を問わない初期スクリーニング時の値。
核種毎の場合は、I-131の限度は 10Bq/L となっている。
これがネットで、WHOの基準が1Bq/L と 10Bq/L で混在している原因らしい。いろいろ細かい付加情報が省略された状態で出回っているので一見すると整合性がとれないようにみえてしまい難しい。

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